木彫クラフトふくろう工房
イチイ(一位)に魅せられて
木彫をはじめて20数年になります。
始めてめぐりあった木が、イチイであったことが、幸運で、その後、
この木に魅せられて、彫り続けてきました。
まだまだ、木を充分に生かしているとはいえません。
これからも、イチイと付き合ってゆきたいと思っています。
そして、いつの日か、イチイから、喜んでもらえるような作品が出来ます
ことを・・・・
次に、イチイという木について記してみます。
和 名 イチイ(一位) イチイ科 常緑針葉樹
学 名 Taxus cuspidata
別 名 アララギ,アイヌ語ではオンコといいます.
分 布 日本全土、サハリン、南千島、朝鮮半島、中国、シベリアに自生。
日本では、北海道から九州まで自生していますが,特に北海道や東北では群生
地が見られます。
本州では、岐阜県大野郡宮村位山(くらいやま)の国有林も有名ですが、現在で
はかなり少なくなっているようです。
特 長 イチイはあまり大きくなる木ではなく、せいぜい10数mで、直径も60㎝は超えない
といわれています。
樹皮はスギと似ていますが、より赤みが強い赤褐色で、より細かい縦の割れ目が
入っています。
葉はモミの木ににていますが、より細くて軟らかい。
雌雄異株で、3、4月に開花し,秋には真っ赤な実をつける。
その仮種皮は甘味があり、美味しく食べられますが、種子は有毒です。
名前の由来
イチイの名前は、仁徳天皇がこの木で「笏(しゃく;束帯のとき右手に持つ薄い板。
神主なども使う)しゃくをつくらせ、それで正一位を授けたので「一位」と呼ばれるこ
とになったといわれています。
しゃくの材料には、飛騨の位山(くらいやま)産のイチイがおもに用られたようです。
そしてしゃくは、いまだにイチイでつくられています。
また、しゃくは高官が儀式のときに持つ板ですが「延喜式(えんぎしき・927)」から
イチイの材で作られるようになったとされています。平安時代は別の材で作られて
いたようです。
材質の特長と活用
心材は美しい紅褐色で加工しやすく、彫刻材・家具材として用いられる。鉛筆用
には最高の材料とされる。
針葉樹の中ではかなり堅い材に属し、材の強度も充分あります。
また年輪が細かく、木理は通直で、木の肌もなめらかで光沢があり、優美な感じが
する。
さらに板の反りや割れも少なく、材が重厚な割に切削などの加工も容易です。
大きな木がないという点を除けば、これほど木工に好適な材はまず見当たらないと
さえ言える優良材です。
今は、建築材や家具につかえるほどの量は確保できなくなったので、彫刻など
小さく、高価なものにのみ使われています。 赤くて艶がある材質が珍重がられる
ので、寄木細工や象眼細工の材料となることも多い。
飛騨の高山では、「一位一刀彫」という伝統の工芸があり、現在でも沢山の彫刻師
たちがいます。
高山のイチイの材質は緻密で、やや堅く心材は赤紫色で光沢に富み、くるいが
ないので工芸用材としてイチイ細工が盛んで家具や彫刻が有名です。
この地方はイチイの巨木が多く、保護林とされていた時代もありましたが、戦後
伐採されてしまいました。
また、世界各地で弓の材料として用いられていたようで,学名のTaxusはギリシャ
語の弓(taxos)に由来し,アイヌもまた、この木の心材を、良く枯らしてから熱を
加えて曲げて弓にしたそうです。
その他の利用
生 薬
葉を採取して水洗いして、天日で乾燥した物を、生薬で一位葉(いちよう)といい
ます。 利尿、通径薬として、また糖尿病に一位葉(いちよう)を用います。
オンコ酒(果実種)
9~10月ころに甘味のよく出た偽果(ぎか)を採取して、水洗いしてよく水を切り、
紅色の仮種皮のみをとり、仮種皮の量の2~3倍量のホワイトリカーを入れて、
漬け込みます。
よく成熟するには約6ヶ月かかりますが、3ヶ月程度から飲用できます。
甘味は成熟後、砂糖でつける方が良いようです。色は美しいコハク色になります。
緩下、せき止めに効き目があるとされています。
染 料
心材は暗赤色の色素を含むので、砕いて水に浸して暗赤色の染料になります。
ふくろう工房
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